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関口 哲弘; 関口 広美*; 馬場 祐治
Surface Science, 454-456, p.363 - 368, 2000/05
被引用回数:23 パーセンタイル:72.38(Chemistry, Physical)シリコン(Si)半導体上における簡単な炭化水素分子の表面科学反応はSiC薄膜生成などの応用面からの要請も相俟って活発に進められている。本研究においては室温及び低温(93K)のSi基板上にアセトン((CH)CO)を吸着させた系について放射光からの軟X線を励起光源として起こる解離反応を調べた。アセトンは放射光の励起エネルギーを変えることにより、分子中の(-CH3とC=Oの)二種類の炭素原子を選択して内殻励起することができると考えられている。放射光照射により生じるイオン脱離生成物を四重極質量分析により検出した。単分子~約50分子吸着層についてフラグメント収量の励起光エネルギー依存性を測定した。実験結果としてはメチル基(CH)の炭素が内殻励起された場合のみ、CH(n=0-3)イオンが顕著に生成することがわかった。この結果はこの共鳴励起でC-C結合が特に顕著に切断されていることを示唆している。
関口 哲弘; 関口 広美*; 馬場 祐治
Photon Factory Activity Report 1998, Part B, P. 68, 1999/11
シリコン(Si)半導体上における簡単な炭化水素分子の表面化学反応はSiCやダイヤモンド薄膜の生成などの応用面に関連するため広く研究されている。本研究においては室温及び低温(93K)のSi基板上にアセトン((CH)CO)を吸着させた系について放射光からの軟X線を励起光源として起こる解離反応を調べた。アセトンは放射光の励起エネルギーを変えることにより、分子中の(-CHとC=O)の二種類の炭素原子を選択して内殻励起することができると考えられている。放射光照射により生じるイオン脱離生成物を四重極質量分析により検出した。単分子約50分子吸着層についてフラグメント収量の励起光エネルギー依存性を測定した。実験結果としてはメチル基(-CH)の炭素が内殻励起された場合のみ、CH(n=0-3)イオンが顕著に生成することがわかった。この結果はこの共鳴励起でC-C結合が特に顕著に切断されていることを示唆している。
関口 哲弘; 馬場 祐治; Li, Y.; Ali, M.
Photon Factory Activity Report 1998, Part B, P. 67, 1999/11
放射光のX線エネルギーを変化させることにより特定の元素の内殻電子準位を選択的に励起することができる。これは、例えば、ディジタル・エッチング(薄膜吸着光照射(反応)薄膜吸着…を単分子レベルで進行させようというアイデア)に応用できる可能性がある。本研究では表面励起とバルク励起の選択性を見積もるため、シリコン(Si)基板上にイオウ(s)化合物((CHS))を吸着させた系に対し、基板(Si 1s)励起と吸着種(S 1s)の内殻励起により引き出される解離反応を調べた。放射光照射により生じるイオン脱離生成物を四重極質量分析により検出した。結果としてはイオウ原子イオンがあるイオウ内殻共鳴励起で生じ、基板Si励起では検出限界以下という大きな選択性が観測された。励起される吸着分子の数は歴される基板原子数に比べ数桁も小さいにもかかわらず、生成収量は大きいという非常に高い選択性が示された。
水田 幸男*; 森下 憲雄; 桑田 敬治*
Chemistry Letters, (328), p.311 - 312, 1999/00
光誘起重合反応における生長ラジカルが、イソプレン及びメタクリル酸メチルモノマー系において、時間分解ESR分光法により初めて検出・同定された。スピン-格子緩和過程を取り入れた化学反応論的取り扱いにより、実験的に得られたFT(フーリエ変換)ESR信号の時間発展を再現した結果、生長ラジカルの生成速度定数及びスピン-格子緩和時間が決定された。
馬場 祐治
電気学会原子力研究会資料, p.25 - 29, 1997/09
「原子力研究会」において、放射光軟X線を用いた固相分子、吸着分子の元素選択的、サイト選択的な表面光化学反応に関する最近の成果を発表する。
光量子科学センター
JAERI-Review 97-004, 62 Pages, 1997/03
本報告書は、大阪支所において平成7年度に行われた研究活動をまとめたものである。主な研究題目は、レーザー有機化学反応の研究と放射線加工技術の基礎研究であり、本報告書では以下の研究活動について詳細に述べる。レーザー光による物質変換、レーザー光による高分子の表面化学反応、放射線による微細加工、放射線による金属微粒子の合成、線量測定および照射施設の運転・管理。
関口 哲弘; 関口 広美*; 田中 健一郎*
Atomic Collision Research in Japan, (23), p.84 - 85, 1997/00
電子励起による固体表面からのイオン種の脱離過程は、二次イオン質量分析(SIMS)及び電子刺激脱離(ESD)などの表面分析における重要かつ基礎的な過程である。本研究は選択励起されたSi(100)表面上の吸着ギ酸分子(DC00-)の分解及び脱離課程を光イオン・光イオン・コインシデンス分光法により調べた。C-Dコインシデンス収量の励起エネルギー依存性を詳細に測定し、敷居エネルギー等を決定した。C-Dは炭素内殻励起で生じ、酸素内殻励起ではほとんど増加を示さない。また二電子イオン化(shake-off)の断面積が一電子イオン化(normal)に比較して10%以下であるにもかかわらず、C-D収量はshake-off領域でnormal領域の2倍以上に増加した。このことから、脱離前駆体のイオン価数及び初期光励起における内殻ホールの位置がどの原子にあるか等がイオン脱離反応において重要であることが見い出された。
関口 広美*; 関口 哲弘
Atomic Collision Research in Japan, (23), p.82 - 83, 1997/00
光刺激イオン脱離収量の内殻吸収端微細構造(PSID-NEXAFS)スペクトルは特定の表面吸着種の空軌道の性質等の局所的情報を与えると期待されている。本研究においては、Si基板に単分子吸着したDCOO吸着種からの酸素内殻励起領域におけるPSID-NEXAFSを高分解能軟X線分光器を用いて測定した。結合エネルギーの化学シフトを利用して、二種類の酸素を選択して内殻励起し、それぞれの励起で起こる脱離反応収量の違いを調べた。ヒドロキシ基酸素(-O-)の励起によりCDOイオン収量が増加し、カルボニル基酸素(C=O)の励起ではCD収量が増加した。このことから選択励起された原子の近傍で優先的に結合切断及び脱離が起こることが明らかにされた。また、O収量はカルボニル基酸素の励起で増加した。この結果は、ヒドロキシ酸素が基板のSi原子に直接結合しているため励起エネルギーが基板に散逸したためと考えられる。
関口 哲弘; 関口 広美*; 小尾 欣一*; 田中 健一郎*
J. Phys., IV, 7, p.505 - 506, 1997/00
ギ酸メチル吸着系の炭素(C)および酸素(O)K殻励起により起こる光刺激イオン脱離反応をパルス放射光を利用した飛行時間質量分析(TOF)法により調べた。CおよびO 1s内殻電子励起によりH,D,CH,O,OCH(n=0~3)などの脱離イオン種がTOFスペクトル上で帰属された。また、これらのイオン収量の励起波長依存性を定量的に測定した結果、いくつかの共鳴内殻励起で励起状態における電子構造を顕著に反映して脱離収量が増加することがわかった。脱離機構を更に調べるため、脱離イオン同士での光イオン-光イオン-コインシデンス(PIPICO)実験を試みた。その結果(H-CH),n=0~2コインシデンス・ピークが観測され、またCHイオン収量の励起スペクトルと一致した。このことから、脱離イオン収量の共鳴励起増強効果のモデルとして表面上での多価イオン生成が関与していることが示された。
清水 雄一; 杉本 俊一*; 河西 俊一; 鈴木 伸武
Laser Chem., 17, p.97 - 108, 1997/00
過酸化水素存在下でのマレイン酸溶液の光化学反応をエキシマレーザーを用いて研究した。レーザー光の波長効果の研究から、オキシ酸の生成にはXeF光(351nm)が有利であることがわかった。XeF光による水溶液中の反応では、グリコール酸が主生成物であり、酒石酸生成の選択率は非常に小さかった。しかし、水に1,4-ジオキサンを添加すると、その選択率は急激に増大し、ジオキサン溶液中では、約80%の選択率が得られた。このように、少量の過酸化水素を含むマレイン酸の1,4-ジオキサン溶液を室温でXeFレーザー光照射すると、酒石酸が選択的に直接合成できることを見出した。一方、メタノール、N,N´-ジメチルホルムアミド、アセトニトリルおよびテトラヒドロフラン溶液中の反応では、酒石酸の選択率は水溶液中の反応に比べてほとんど増大しなかった。これらの結果に基づいて、酒石酸の選択的生成の反応機構を考察する。
関口 哲弘; 関口 広美*; 田中 健一郎*
Surface Science, 390(1-3), p.199 - 203, 1997/00
被引用回数:4 パーセンタイル:33.00(Chemistry, Physical)放射光励起によって引き起こされるイオン脱離反応は表面反応の解明や表面状態および構造に関する知見を与えるものとして近年注目を集めている。イオン脱離反応の機構をより深く理解するためには、励起により表面上に生成する多電荷イオン中間体をなるべく直接的に観測することが望ましい。本研究は気相の光化学反応過程を調べるのによく用いられる手法である光イオン・光イオン・コインシデンス分光法を表面反応に応用することにより多電荷イオン中間体の反応挙動を調べたものである。HO/Si(100),DCOOD/Si(100)DCOOCH multilayer試料の結果を示すとともに、各々の結果を比較した。その結果(1)コインシデンスの励起スペクトルは多電子励起領域で大きな増加を示すこと、(2)これら励起スペクトルの立上がり敷居エネルギーは吸着種と基板(又は周囲吸着種)との相互作用を反映して、各々大きく異なること、等が見出された。
清水 雄一; 河西 俊一
Chemistry Letters, 0(11), p.935 - 936, 1996/11
過酸化水素の存在下でアクリル酸の水溶液を高強度のXeFレーザー光(351nm)で照射することによる乳酸の新規な直接合成法について述べる。乳酸の収量はレーザー光の照射量と過酸化水素の添加速度に大きく依存し、最大収量での乳酸生成の量子収率と選択率はそれぞれ0.3および50%であった。生成物分析の結果から、過酸化水素のレーザー光分解で高密度に生成したOHラジカルはアクリル酸のと位の炭素に均等に付加して、乳酸とヒドロアクリル酸を1:1で生成することがわかった。
河西 俊一; 一ノ瀬 暢之
レーザー研究, 24(7), p.780 - 786, 1996/07
フッ素系高分子は耐熱性や耐薬品性などに優れているが、表面の接着性、親水性が乏しいことから表面改質の要求が高い。しかしながらフッ素系高分子は化学的に安定なため改質が困難である。そこで、レーザーの単色性や高強度性などによる特異反応を利用した改質の研究が行われるようになってきた。本報告では、レーザーを用いたフッ素系高分子の表面改質についての研究の現状をまとめるとともに、「レーザー有機化学反応の研究」で実施したフッ素系高分子表面のレーザー光化学修飾について紹介する。これは、フッ素系高分子を種々の化合物の水溶液や溶媒中でレーザー光を照射することによって、フッ素系高分子表面に化合物の持つ官能基を選択的に反応させる技術であり、これによってフッ素系高分子表面に任意の機能を付与することができるようになった。さらに、先端レーザーを用いた研究への展望を述べる。
関口-池浦 広美*; 関口 哲弘; 田中 健一郎*
Physical Review B, 53(19), p.12655 - 12658, 1996/05
被引用回数:28 パーセンタイル:79.36(Materials Science, Multidisciplinary)Si(100)上に化学吸着した重水素置換したギ酸からの光刺激イオン脱離反応について結合を選択したC 1s電子励起によって研究を行った。各イオン収量は励起エネルギーに強く依存し、特定の反結合性軌道への励起によって選択された結合が切れ、それによりイオン収量が増大することを見い出した。結果は吸着系での内殻イオン脱離に対して提出された2ホール1電子反応機構の妥当性を示した。更に(C-D)/3S Rydberg混合励起状態に相当する共鳴ピークで、Dピークは(C-D)価電性励起に、CDピークはRydberg性励起に分離されることが見出された。また、INDO/CI分子軌道法による励起電子状態理論との比較を行い脱離機構を考案した。
関口 哲弘; 関口 広美*
Atomic Collision Research in Japan, 0(22), p.89 - 90, 1996/00
ギ酸メチル分子のいくつかの内殻励起状態における波動関数が各官能基や結合に局在しているという研究背景を元に、高エネルギー分解能の軟X線分光器により内殻励起状態を選択励起することにより「結合を選択した光化学反応」の可能性を検討した。実験手法としてはパルス放射光を用い、同位体置換ギ酸メチルの吸着系から脱離するイオン種を飛行時間質量分析法により観測した。各イオン収量の励起スペクトルは吸収スペクトルとかなり異なり、イオン脱離確率が初期内殻励起にかなり依存していることが見出された。特にDとCHイオン脱離確率が大きく増加した励起はC 1s(CH)(O-CH)とC 1s(C=O)(C-D)といった反結合性軌道への電子遷移による結果であると解釈された。この結果は励起エネルギーを変化させることにより分子内の反応部位(サイト)を任意に選択することができる可能性があることを示したものである。
関口-池浦 広美*; 関口 哲弘; 田中 健一郎*
Atomic Collision Research in Japan, No.21, 0, p.104 - 105, 1996/00
液体窒素温度に冷却したSiO基板表面上にSFを吸着した系において、Si近傍の放射光を照射し、生ずる反応生成物の検出から、F原子だけではなくS原子をも含む活性種もエッチング反応に対して重要な役割を持つことが見い出された。又、表面反応層についての知見を得るため、光電分光法(XPS)を用いてSiピークのシフトの照射時間依存性を測定した。その結果、反応の初期段階において、SiO層が段階的にフッ素化されていることが見出された。以上の結果から、内殻励起エッチング反応機構について考察した。
池浦 広美*; 関口 哲弘; 田中 健一郎*
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 80, p.121 - 124, 1996/00
被引用回数:4 パーセンタイル:26.09(Spectroscopy)高分解能放射光源による状態を選別した内殻励起を行い、X線吸収端微細構造領域における軟X線光化学反応を調べた。Si(100)上に化学吸着させたDCOO分子から内殻励起により脱離するイオン・フラグメント種をパルス放射光を利用した飛行時間質量分析法により検出及び同定を行うことに成功した。C 1s内殻励起によりD、CDO、O、CDなどのイオン種がかなりの信号量で観測された。更に、各イオン生成物分布の励起エネルギー依存性を測定した結果、各イオン種の脱離確率が初期励起にかなり依存することが見出された。特にD収量とCDO収量がそれぞれ(C-D)と(C-O)共鳴励起で選択的かつ顕著に増加した。この結果は空軌道の反結合性が脱離に寄与していることを示している。
関口 哲弘; 関口 広美*; 小尾 欣一*; 田中 健一郎*
Photon Factory Activity Report, (14), P. 257, 1996/00
本報告書は高エネルギー研究機構・放射光実験施設において研究課題番号94G-360に基づいて行われた研究の活動内容を報告したものである。本研究課題においては主に光イオン・光イオン・コインシデンス分光法を駆使して吸着分子の多価イオン化状態からの分解及び脱離反応の機構を調べた。ここでは特に吸着ギ酸分子(DCOO-)のイオン脱離について記載した。C-DとO-Dのイオン対生成収量の励起エネルギー依存性を測定した結果、C-Dは炭素内殻励起で生じ、O-Dは酸素内殻励起で生じるという結果が得られた。また、これまでのいくつかの測定結果から、イオン対はいつも初期内殻励起された原子の脱離イオン種ともう一方の脱離イオン種との対として生じるという規則があることが見出された。これらのことは脱離が起こる時間内においてオージェ過程により生成した正孔が初期励起された原子近傍にかなり局在していることを示した。
大阪支所
JAERI-Review 95-002, 62 Pages, 1995/03
本報告書は、大阪支所において、平成5年度に行われた研究活動をまとめたものである。主な研究題目はエキシマレーザー光照射による高付加価値化合物の合成、高励起状態からの化学反応、高機能性付与のための高分子表面改質、電子線照射による重合反応、線照射による金属微粒子の合成および線量測定の研究などである。
一ノ瀬 暢之; 円尾 正晴*; 河西 俊一; 泉 佳伸*; 山本 忠史*
Chemistry Letters, 0(10), p.943 - 944, 1995/00
六フッ化プロピレン-四フッ化エチレン共重合体(FEP)フィルムと種々の溶媒のトリエチルアミン(TEA)溶液とのKrFレーザーによる光化学反応を検討した。FEPフィルムをTEAアセトニトリル溶液と接触させKrFレーザー光(35mJcmpulse)を6000ショット照射したところ、フィルム表面は親水性かつ親油性を示した。XPSによる元素分析の結果、フッ素が著しく減少し、わずかに窒素、酸素の増加が認められた。接触角のpH依存性からジエチルアミノエチル化、UV吸収スペクトルからは共役二重結合の生成がそれぞれに示された。この反応の溶媒硬化、および光源の波長依存性などからTEAの光イオン化、溶媒和電子のFEPによる捕捉を経て進行することが結論された。